2011年 07月 18日
【山梨常会資料 第二十二号 昭和16年10月1日発行】 昭和12年の製鉄事業法の制定を第一歩として鉄鋼生産の拡充と原料の自給化を進め、アメリカとの鉄くず依存関係を脱却するために、鉱石から一作業工程で鉄鋼が生産できる、銑鋼一貫作業の設備を拡充するための計画をたて、一、二年で日本の鉄鋼陣営が自給体制を確立できる見込みのところまで達していたが、アメリカを始めとした諸国が対日経済圧迫の手段として鉄くず輸出禁止を断行した。また、銅についても当時の日本国内においては、需要激増で生産量を遥かに凌駕していたが、アメリカ、カナダ、チリ、フィリピン等は従来日本に向けての銅鉱石、電気銅の輸出を中止するなど、国内における鉄銅の回収が急務の状況になっていた。 昭和12年の盧溝橋事件以降、これまでは市町村、各種団体等の活動により廃品回収の一環として鉄銅類の回収に努めてきたが、国際情勢の変化に備え、昭和16年4月1日から第一次官庁、公共団体金属類特別回収を実施し、6月下旬から7月にかけては全国の工場、事業所等の鉄銅の不用品、廃品の回収に全力を傾ける状況であったが、民間物件についても昭和16年10月1日から特別回収が実施されることとなった。 金属類特別回収の実施については、国家総動員法に基づく勅令である「金属類回収令」、閣令「回収物件施設指定規則」、商工省令「金属類回収令施行規則」が9月1日から実施され、鉄、銅又は黄銅、青銅、その他の銅合金が回収される物件であるが、指定施設、非指定施設、一般家庭では、その取り扱いは異なっていた。 指定施設(常時10人以上の職員が勤める工場、事業場、商店、銀行、会社、倉庫業、電気、ガス、交通事業、私立学校、病院、劇場、興行場、旅館、料理屋、飲食店など)については閣令により指定された金属は強制的に回収され、指定施設以外の施設と一般家庭については、10月1日の次点においては、法令による供出の強制は定められていかったが、愛国的熱情にうったえて自発的に供出されることを強く期待するといった状況であった。 【甲府宝塚劇場ニュース 第二百九十号 昭和17年1月14日発行】 金属類回収令の趣旨と重要さを周知し、より積極的な協力を求めるため、当時の内閣情報局は企画院、商工省、内務省、文部省、鉄屑統制株式会社、戦時物資活用協会等の官庁や民間団体の協力により、日本映画社に「鉄銅に動員命令下る」という啓発宣伝映画を製作させ、映画法に基づく全国指定上映を行わせた。 (映画法に基づく全国指定上映とは、行政官庁は命令の定めるところにより、特定の映画興行者に対して啓発宣伝上において必要な映画を交付し期間を指定してその映画を上映させるものである。) 甲府におけるこの映画は、昭和16年12月18日から昭和17年2月17日までの二ヶ月間、当時、太田町にあった甲府宝塚劇場において上映されている。 【甲府宝塚劇場ニュース第二百九十号の内容】 赤線で囲んだ箇所に「鉄銅に動員令下る」の上映について記載されている。 ブログをご覧いただきありがとうございます。峡陽文庫のブログ運営の励みとなります、ご覧の都度1日一回、左の『「山梨情報』をクリックいただけますようお願いいたします
by kaz794889
| 2011-07-18 17:35
| 戦時期の山梨
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