2009年 03月 29日
━山梨県教育会附属図書館━ ![]() 明治33年10月に開館した山梨県教育会附属図書館は、甲府市錦町、桜町と、その場所を移転しながら、明治44年11月に旧甲府城内に移転していたが、大正、昭和と20年以上の年月が経過し、改築の機運が醸成され、昭和3年の冬、教育会図書館を改築・拡張するのであれば寄附を引き受けてもよいとの根津嘉一郎との内諾が得られ、昭和4年6月に正式に山梨県教育会附属図書館建設費寄附が決まり、清水組により昭和5年3月5日に起工、同年9月15日に竣工した。 昭和5年発行の『山梨県教育会附属図書館新築記念』誌の序によれば「本館ハ貴族院議員根津嘉一郎氏ノ寄附ニ係リ昭和5年3月工ヲ起シ9月15日に落成ス敷地288坪、建坪209坪余、自由近世式鉄筋コンクリート2階建ニシテ県庁舎ノ南面ニ位置シ兼ネテ本会ノ事務所タリ。」と記されている。 ━山梨県教育会附属図書館 閲覧室━ ![]() 1階に設置された閲覧室の落成当時における様子である。 ━(甲府名所) 山梨県庁━ ![]() 新築された山梨県教育会附属図書館は、昭和5年3月に竣工した旧山梨県庁舎(現在の県庁別館)と相対し、甲府市内における一偉観であった。 旧甲府中学校の新築移転後、旧甲府城の堀を埋め立てる等して楽屋曲輪に新築された県庁舎と南側後方からの教育会附属図書館である。 【山梨県立図書館一覧(昭和7年9月)】 ![]() その後、昭和20年の終戦により日本に進駐した米軍により図書館は接収され、山梨軍政部が接収後の建物内に設置され、昭和25年4月の接収解除まで山梨軍政部の庁舎として使用されていた。 また、県立図書館の利用者の増加に伴い、庁舎東側にコンクリート2階建による増築を行った。なお、この増築に際しても、2代目根津嘉一郎からの寄附及び県費によるものであった。 【図書館平面図】 ![]() 【県庁第一南別館(旧山梨県立図書館)①】 ![]() 東側から眺めた旧山梨県立図書館庁舎である。 旧山梨県立図書館は昭和20年7月の甲府空襲において罹災せずに焼失を免れており、現在は県庁第一南別館として使用されている。 【県庁第一南別館(旧山梨県立図書館)②】 ![]() 正面から眺めた旧山梨県立図書館である。『山梨県庁舎の耐震化等整備に関する報告書』及びその後の基本計画等によれば、県庁第一南別館として使用している旧山梨県立図書館庁舎は文化財的価値が相当高いと認めながらも、建築物としての価値や歴史的経緯を残すことの意義を優先せず、新たに予定されている新庁舎の建設のみを優先する結果を生み出そうとしている。 旧県庁舎、県会議事堂、旧山梨県立図書館の三つの建物が残ることにより、初めて県庁構内の歴史的景観が守られるのである。今から80年前に歴史的遺産である甲府城の石垣や堀を県庁舎新築のために無造作に取り壊した歴史破壊の代償として建設され、時間の経過によりその代償として建てられた建築物が再び歴史的遺産として醸成されたにも関わらず、同様の愚策を再び行おうとしている現状は、まさに何をか況やではないだろうか。 ![]()
by kaz794889
| 2009-03-29 16:45
| 山梨の近代建築
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Comments(3)
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全く同じ意見です。言語道断です。あまりにも学がない短絡的な考え方には絶望感すら感じています。これだけ時代文明文化が進歩しているにもか変わらず未だに明治維新から時が止まったかのようにスクラップアンドビルドするとは…悲しすぎましす。
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はじめてコメントさせていただきます。
いつも貴重な情報に、次は何が出るか、うきうきしています。 さて、今回の旧山梨県立図書館に関して思うことですが、 上の方(dioさん)もご指摘の「あまりにも学がない短絡的な考え方」のなせる故、 既に跡形もなくなっています。 それで悲しいと思う人と、知ってはいたがそう悲しいとか絶望とか思わない人、 それから、そんなことあったの、とか、それって何のこと、とか、 いろいろな人がおられるのでしょうけど、県庁の人びとって、どの部分にはいるのか、 何も声が上がらなかったか、上がっても聞こえないほど小さいのか、 近くで壊れ行くのを毎日見ていたのでしょうけど、どうなんでしょうね。 そういう人びとによって県政が動かされている今というのは、恐い気がする・・・。
「わからんじん」さま、いつもご覧いただきありがとうございます。
旧県立図書館の取り壊しについて、県庁職員の方々がどのように思われていたのか。 建物に対する歴史認識や、建物に対する郷愁などから、建物の保存を求めながら取り壊しを残念に思われていた方々が、県庁内に少なくなかったと信じたいと思っています。 自身の経験では、建物の歴史性からの保存を強く願っても、その組織に属する者として、それを組織に訴えることが非常に難しいこと。また、外部から建物の保存が叫ばれても、組織内に対して保存や取り壊しに関する歴史や史料上の観点からの意見を聞くといったことは、一般的にはまずないのではないかと思っています。 しかしながら、今回の問題について非常に残念に思うことは、県庁旧庁舎や県会議事堂の建物は県指定の文化財に指定しながら、旧県立図書館は取り壊しになったことです。文化財の指定に当たっては、審議委員会等において文化財審議委員による議論があると思われますが、旧庁舎を文化財指定する一方で、図書館は取り壊すといったことに対し、審議委員と称する方々はどのような意見を示したのか、その点が非常に気になるとともに、残念に思える部分です。 |
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