峡陽文庫

kaz794889.exblog.jp
ブログトップ | ログイン
2009年 12月 13日

交通道徳と子供の声


【『子供の声』 山梨交通安全協会発行】
f0191673_214315.jpg
 大正14年1月に山梨交通安全協会から発行された、この『子供の声』のはしがきは次のとおり記されている。
 「「交通道徳」「左側通行」曰く「何々」と、あらゆる宣伝は耳に馴れ、眼に飽きて参りました。お互いに便利を増し、危険を除く為めの交通道徳の実行は何等そこに特別な努力も苦心をも変更せず、単に公衆各の一片の道義心と不断の注意とに依って立派に行われねばならぬ筈だが、何故か何時になっても其の実行成績の挙がらぬのは実に遺憾で、いささか世の公徳心が疑われるのだ。この際正直にしてしかも敏感に子供の「今日に於ける交通道徳」は如何なるものかを紹介いたし、父兄方の参考に供した次第であります。純真なる心に映ずる交通上の悲劇、喜劇、直情なる悲憤の叫び真摯の筆、如何に吾人の反省自覚を促すものあるか、本冊子を単なる児童の成績物として見過ごすことなま、其の熱烈なる心情を読まれんことを切望いたします。」
 
 道路を通行する者の左側通行等を規定した法令は、「道路取締令(大正9年12月内務省令第45号)」として大正10年1月1日から施行されている。
 この『子供の声』には、当時の甲府市内の尋常小学校及び尋常高等小学校の児童らによる52編の声が掲載されている。
 その中のいくつかについて、当時の市街風景と併せ、以下のとおり紹介する。



━甲府名所 春日町通り━
f0191673_21434436.jpg


 「交通宣伝」 穴切尋常小学校 3年 M・S
 この間、甲府館前の黒山のような人ごみの中を商人風の人が忙しそうに自転車で飛び回っていた。その危なさといったら見ていてもひやひやした。それを巡査が一人で真っ赤になって声をからして止めても、俺の用の方が忙しいやといった風情行ってしまった。大人にもあんな人があるから、交通宣伝がうまくいきっこないと僕はつくづく思いました。
 
 写真の左側の建物が、春日通りに面した映画館の甲府館(以前ダイエーのあった場所)である。

━甲斐 甲府市 柳町大通り━
f0191673_21444161.jpg


 「交通について」 富士川尋常小学校 6年 N・S
 甲府市の市街を眺めて一番人通りの多いのはなんといっても柳町である。柳町には鉄道も敷かれているが、自転車、車などが通っていてとても危険である。それ故、僕の考えは左側は人道、また右側は車道とか人通りの多い町は各それぞれに決めればよいと思う。山田町を眺めるとあまり人通りは多くないが、自動車の行き来が頗る多い故、自動車など一台通れば一台の自動車のため車を引いている人は回していなければならないので、もっと道路を広くした方がよいと思う。また愛宕町の方は柳町や八日町に比較して人通りがとても少ない故に柳町へ来るには鉄道などを敷いて、すぐ仲見世などへ来られるようにすれば、甲府市の大体の交通は便利になる。

━甲斐名所 桜町通り━
f0191673_2145031.jpg


 「左側通行について」 琢美尋常高等小学校2年 S・A
 左側通行……何という善い決まりでしょう。あの狭いいつも賑やかな三日町見附や桜町横丁はもちろん、どんな広い道でも人通りの少ない道でも皆左側通行をしたらどんなに気持ちがよいでしょう。そして立派でしょう。皆それを守れば外国の人にも恥ずかしくなく、また交通上の事故も出ないし、こんなによい決まりはないと思います。それであるのに、これをまだ守らない人があるのです。それが立派な婦人や偉そうな紳士で守らない人があるのです。それを見ると紳士然としていても道徳を守らない人は偽紳士であるという先生のお言葉が思い出せます。皆さん守りましょう。そして日本の国として恥ずかしくないようにしましょう。

 甲府銀座のアーケードと交差する桜町通りの四つ角である。
 また、文章に書かれている三日町見附は、三日町と柳町が交差する地点(甲府銀座アーケードの東側の入口附近)であり、前記の「柳町大通り」の写真に写る附近である。

にほんブログ村 地域生活(都道府県)ブログ 山梨情報へ ブログをご覧いただきありがとうございます。峡陽文庫のブログ運営の励みとなります、ご覧の都度1日一回、左の『「山梨情報』をクリックいただけますようお願いいたします。

by kaz794889 | 2009-12-13 22:56 | Comments(0)


<< 甲陽館 米倉旅館      旅館 西柳屋 >>